理学物理学

どんな学問?

究極理論の探求が未来技術に光を与える

物理学のイメージ画像!物質の構造や空間の性質を研究して、自然界の法則を数式を用いて表現する学問が「物理学」です。物理学の研究対象は、宇宙を支配する物理法則といった壮大なものから実生活と直接の関わりをもつ身近なものまで様々です。
ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊教授が、「ニュートリノを観測したことは何の役に立つのか?」と聞かれて「役に立たない」と即答した、という話があります。また、ミクロの世界を記述する量子力学という分野は「電子は粒子でありまた波でもある」など、私たちの直感が通用しない世界です。しかし、現代社会を支えている半導体の技術は、この量子力学の上に成り立っているのです。現在の科学技術ではまだSF的な空想ですが、何百年後か遠い未来に、ニュートリノが通信技術などで活躍する時代が来るかもしれません。

物理学の研究分野は、「物性物理学(物質の構造や性質を研究する)」「素粒子物理学(ミクロの世界の法則を調べる)」「宇宙物理学(宇宙の構造や成り立ちを探る)」などに大別されます。研究の手段は、実験や観測、コンピュータによるシミュレーションなどです。これらの研究によって得られたデータを蓄積・解析し、データの中にどのような法則が隠されているのかを探求していきます。
こういった理論的な研究を中心とした「理論物理」に対して、より工学に近く、実社会への活用を目的とするものを「応用物理」と言います。しかしながら、理論物理学と応用物理学の間に明確な線引きがあるわけではなく、例えば物性物理学の重要な研究対象の1つである半導体は、言うまでもなく工学面での活用において最重要の素材です。

物理学と化学・生物学など他の自然科学との一番大きな違いは、数学との結びつきが極めて強い点です。古典力学の創始者であるニュートンは、微積分学の創始者でもありました。以来、数学の発展が物理学を進歩させ、また物理学の影響で数学の研究が進むなど、数学と物理学は互いに深く影響を与え合っています。もちろん数学科と物理学科では研究対象も手段も異なりますが、物理を深く学んでいくためには時として数学を深く学ぶことも必要になってきます。

Q&Aこんな疑問に答えます

Q.

物理学に向いているのはどんな人?

A.

物理学といっても物性物理学・素粒子物理学・宇宙物理学で研究対象が異なり、紙とえんぴつで行う理論物理と実験室で行う実験物理では研究の方法が大きく違います。ただ、いずれの道を選ぶにせよ、真理の追究に対する強い思いをもっていることが、研究をしていくうえでの必須条件となります。「なぜ?」「どうして?」という疑問を大事にする人が向いています。また本文中に述べたように数学を駆使しますので、数式に対して抵抗感をもたないことも必要です。

Q.

物理学科のカリキュラムってどんな感じ?

A.

1・2年生で、物理学および物理数学の基礎を中心に学び、学年が進むにつれて徐々に専門の比率が増えていきます。講義・演習・実験が授業の3本柱で、実験も1・2年生からスタートする大学が多いようです。実験では長時間格闘してもなかなか予想していたような結果が得られずに、苦労することもしばしば。しかし、この悪戦苦闘が実を結んだときの喜びは、何物にも代えられません。

こんな研究もあるよ

宇宙は無数に誕生した!?——「マルチバース理論」

この宇宙に生命が誕生したのはなぜか?……という疑問は生物学だけの守備範囲ではありません。素粒子が安定して存在し、原子が形成され、化学結合が作られ……と多数の関門をくぐりぬけて、生命が自然発生する確率は、ほとんど無限に小さいと言っていいでしょう。にも関わらず、なぜ生命が発生したのか?という疑問への解答となる、最近提唱された理論が「マルチバース(Multiverse)理論」です。「宇宙が誕生したとき、私たちがいるこの宇宙(Universe)たった1つだけができたのではなく、無数の宇宙が一緒に誕生しており、それぞれの宇宙はそれぞれ独立して存在している」というもので、「無数に宇宙ができたからこそ、(生命が誕生するという奇跡的な確率の現象が起こった)この宇宙も成立することができたのだ」と説明づけられます。

ひとことコラム

科学と疑似科学

近年、新聞やテレビで「ホメオパシー」という言葉を目にします。ホメオパシーとは200年ほど前に始められた民間療法で、ごくごく大雑把に言うと「毒をものすごく薄めると薬になる」という考え方です。どのくらい薄めるのかというと、「100倍に薄める」という操作を30回繰り返すのです。さて、100倍希釈を30回繰り返すと濃度はどうなるかというと……100の30乗分の1、すなわち1060分の1です。アボガドロ定数が約6.0×1023/molであることを知っている人であれば、「この薬を1g飲んでも、そこにはもとの成分がほぼ確実に、1分子も残っていない」ということが直感的にわかるでしょう。
「一見科学のふりをしているが、実は非科学的なもの」を疑似科学と言います。疑似科学によって人々が誤った判断をしないよう科学的思考を啓蒙していくことも、自然科学に携わる人間の責務と言ってよいでしょう。

卒業後の主な進路

大学院進学率の高さが特徴的!
電気関連・精密機器などのハイテク分野で活躍

大きく研究者を目指すケースと、企業での技術者を目指すケースがあります。前者はもちろん、後者においても大学院への進学率が非常に高いことが特徴です。実社会で求められている研究がどんどん専門的になっており、一般企業でもより高い専門性をもった人材が必要とされていることの表れと言えます。就職先の業種としては電気関連や精密機器などのハイテク分野が目立ちます。

物理学者の進路先のイメージ画像

専門用語を知ってるかな?

クォーク

原子は原子核と電子からなり、原子核は陽子と中性子からなりますが、陽子や中性子は粒子の最小単位ではなく、さらに小さなクォーク(quark)と呼ばれる粒子が3つ集まってできています。クォークの種類が6種類であることを予言したのが「小林−益川理論」で、これにより小林誠・益川敏英の両氏にノーベル物理学賞が授与されました(参照)。なお、このクォークという名前は、ジェイムズ・ジョイスの小説『フィネガンズ・ウェイク』に出てくる鳥の鳴き声を表す単語からとられたものです。

タイムマシン

時間を過去にさかのぼることのできるタイムマシンなんて、SFや映画の中だけの話……かというとそんなことはなく、理論物理学の世界では大真面目に(?)タイムマシンの可能性が検討されています。有名なのはカリフォルニア工科大のキップ・ソーン博士によって提案された、ワームホールを利用したタイムマシン仮説。なんと日本ではこの原理を利用したタイムマシンが5つも特許登録されているとか。『タイムマシンを作ろう!』(ポール・デイヴィス)などという本も出ています。

ニュートリノ/ニュートラリーノ

日本語では中性微子。電気的に中性で、他の粒子とほとんど相互作用しないため地球をも貫通し、その観測は極めて困難です。ニュートリノは当初「質量0」と考えられていましたが、茨城県つくば市にある加速器から岐阜県神岡町のスーパーカミオカンデにニュートリノを打ち込む実験で、質量をもつことがほぼ確実となりました。この実験を行った東京大学の梶田隆章教授は2015年にノーベル賞を受賞しました(参照)。宇宙には、宇宙の質量の大半を占めるが光を反射しない「暗黒物質(ダークマター)」が存在するとされています。質量は小さくても膨大な数が存在するニュートリノは暗黒物質の有力候補でしたが、確認された質量が極めて小さいため、新たな暗黒物質候補として未発見粒子「ニュートラリーノ」が浮上しています。

量子コンピュータ

量子力学の原理を応用したコンピュータ。「重ね合わせ」という現象を利用して従来のコンピュータが別々に行っていた計算を同時進行で行うため、格段に速いスピードで情報処理を行えます。一方で、現在私たちが利用している暗号もすぐに解読されてしまうという危険性も指摘されています。ただ、このコンピュータが実用化されるのはもう少し先になりそうです。

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