理学数学

どんな学問?

現代社会を支える「学問の女王」

異文化コミュニケーションのイメージ画像!「数学は学問の女王」という言葉があります。この言葉には「数学は極めて美しく高貴な学問である」「数学の内容は一般人の生活には無縁である」というニュアンスが含まれています。たしかに、数学や数学者に浮世離れしたイメージをもつ人もいるでしょう。しかし、数学は科学の発展になくてはならない存在であり、その研究成果は日常生活にも役立てられています。例えばインターネット社会で情報流出を防ぐ暗号技術。現在は「整数論」が駆使されています。整数論は、かつては数学の中でも特に実用と無縁なジャンルでしたが、高度情報化社会の到来によって欠かすことのできない理論となったのです。
ここでは、数学の分野を大きく4つに分けて見ていきましょう。

1.代数学

「数」は実社会で最も身近な概念でありながら、とても奥が深いものです。「代数学」はその名のとおり、数字を文字で表すことで数の性質や法則を研究します。代数学の研究成果は数学の諸分野を発展させ、最近では銀行口座やクレジットカードの情報を暗号化して安全に送受信するシステムなどに応用されています。

2.幾何学

図形や空間の性質について研究する分野です。古代エジプトではナイル川の氾濫後に土地を復旧させるため、測量が行われていました。これが幾何学の始まりと言われています。現在では代数学や解析学の考え方も取り入れて、より高度な研究を行います。宇宙の形状の研究などもその1つです。

3.解析学

微分積分を使って物の変化を研究する分野です。大学では新たに「微分方程式」というものを学びます。この微分方程式は、将来の人口変化の予測や景気変動の予測など、実社会の様々な場面に応用されています。

4.統計学

集団の中で起こる現象の分析方法を研究する分野です。大量のデータから集団の性質を記述する記述統計学と、全体の中から一部を選び出して集団全体の性質を推測する推計統計学に分類されます。迷惑メールを自動的に分別するフィルタは統計学を応用した身近な例です。

また、数学は理論の研究を中心とする「純粋数学」と応用を目的とする「応用数学」に分けられることもあります。一般的に「数学科」は前者、「応用数学科」は後者に属しますが、「数学科」では応用数学的な視点が要求されることもあり、「応用数学科」では基本となる数学原理の学習が要求されます。最近では、両者を統合した「数理科学」という名称を用いる大学も増えています。

Q&Aこんな疑問に答えます

Q.

数学に向いているのはどんな人?

A.

絶対条件は、数学が好きであること。「問題が解けると嬉しい」という気持ちは、数学の勉強に向かわせる強い動機づけです。しかし、ここで心得てほしいことは、高校までの数学と大学の数学は大きく違うということ。高校までの数学は「問題が与えられて、模範解答があって、答え合わせができる」ものでしたが、大学での数学は「問題を自分で見つけ、解答は自分で探し、答えは存在するかわからない」ものです。数学の研究者に求められるのは、入試で求められるような「制限時間内に問題を処理する能力」ではなく、「いつまでも地道に問題を考え続けることのできる集中力」です。

Q.

数学科のカリキュラムってどんな感じ?

A.

1・2年生の段階では基礎的な内容が中心、3年生から専門的な内容に徐々に分化、というのが一般的でしょう。授業の形式は講義と演習がほとんど。指定された教科書を、例題を解きながら時間をかけて理解していきます。また、「輪講」と言って、数名ずつの小グループに分かれて1冊の本や論文(主に英語)を分担して読み解いていく時間もあります。

ひとことコラム

数学者たちの偉大なる挑戦

高度な発達を遂げた現代数学ですが、数学にはまだまだ残されている未解決問題が存在しています。アメリカのクレイ数学研究所は、2000年に「リーマン予想」「P≠NP予想」といった7つの大問題に対して100万ドルの懸賞金をかけ、これらの問題は「ミレニアム懸賞問題」などと呼ばれたりします。ミレニアム問題の1つである「ポアンカレ予想」は、2003年にロシア人数学者ベレルマンによって証明が提出されました。この功績によってベレルマンは数学のノーベル賞と呼ばれるフィールズ賞を与えられましたが、人嫌いで知られる彼はこれを辞退し、話題になりました。

こんな研究もあるよ

巡回セールスマン問題

「いくつかの都市があり、セールスマンがそれぞれの都市を訪問して一周するとします。どのような経路が最短となるでしょうか?」
問題自体は単純です。すべての経路についてかかる時間を計算し、一番短いものを選べばよいですね。しかし、「すべての経路」を調べるのは大変です。都市の数をnとすると、考えるべき経路の総数は(n−1)!/2(じゅず順列)となり、nが大きくなると全経路を比較するのは実質的に不可能になります。そこで、短時間で近似解(最短に近い解)を見つけるプログラムが必要になるのです。この研究はロジスティックス(物流の管理)という経営学上の重要問題に直接結びついています。

卒業後の主な進路

大学院進学の他、知識を応用し情報・金融業界も!

大学院進学率の高さが最大の特徴です。現代の数学は極めて高度に専門化されており、学部4年間の勉強ではなかなか最先端の研究まで到達しません。大学院進学以外には、中学・高校の教員や、情報サービス産業への就職が多いでしょう。「保険数理」という応用数学の一分野もあり、保険会社や銀行などでアクチュアリー(資格一覧参照)と呼ばれる資格をもって専門業務に携わる人もいます。

専門用語を知ってるかな?

オイラーの公式

という18世紀の大数学者オイラーが発見した式のこと。ここでθ=πとするとe=−1となり、小説『博士の愛した数式』にも登場しました。その簡潔さと神秘性、重要性により、「最も美しい定理」と言われることもあります。

非ユークリッド幾何学

高校で学ぶ幾何学(ユークリッド幾何学)では、直線Iと直線外の1点Pが与えられたとき、Pを通るIに平行な直線は1本だけ存在します。これを否定して、「このような直線は存在しない」または「このような直線が2本以上ある」として組み立てられた幾何学が、非ユークリッド幾何学です。非ユークリッド幾何学は、のちにアインシュタインが相対性理論を記述するうえでの基盤となりました。

フェルマーの最終定理

xn+yn=znの方程式は、nが3以上の整数のときは自然数の解をもたない」という定理。見た目のシンプルさとは裏腹に、フェルマーによって提示されて以来約350年もの間解決されなかった超難問で、1994年プリンストン大のワイルズによってようやく決着がつきました。日本人が解決に貢献した部分も大きく、谷山—志村予想と呼ばれるさらに大きな予想が証明に関連しています。

集合の濃度

高1で学ぶ数学Aにも集合は登場しますが、大学ではより深く「集合論」を学び、これが現代数学を支える基盤となっています。「集合論」では濃度という概念を学びますが、これは有限集合(要素が有限個の集合)における要素の個数の概念を、無限集合(要素が無限にある集合)まで拡張したものです。濃度を使うことで無限集合同士での“大きさ”の比較ができるようになり、「自然数全体の集合と有理数全体の集合は“個数”が同じ」「実数全体の集合は有理数全体の集合より“大きい”」といった数々の面白い事実が導かれます。

Interview

「粘菌」が迷路を解く!?

理学研究科 数理分子生命理学専攻 小林 亮 先生

広島大学大学院
理学研究科 数理分子生命理学専攻
(2008年・2010年 イグノーベル賞受賞)

小林 亮先生

粘菌とは?

私が研究しているのは「真正粘菌」(true slime mold)という単細胞生物。この生物が非常に面白いんです。通常の細胞分裂では、細胞が大きくなって核が分裂し、次に細胞質が分裂して2つの細胞になります。つまり常に1つの細胞に1つの核が入っています。しかし粘菌は、細胞が大きくなって核が分裂して、また細胞が大きくなって核が分裂して……の繰り返し。つまり細胞質が分かれず、1つの大きな細胞のままで、そこにたくさんの核が入っているのです。その結果、「大きさが自由」「切っても生きている」「くっつけたら1つの個体に戻る」などの性質があり、スライムのように「変幻自在」です。また、粘菌は単細胞生物ですから、脳も神経もありません。それでも生きているので欲求はあります。例えば、エサがあると体で直接覆って吸収します。同時に「1つにつながっていたい」という欲求もあるため、もしエサが複数箇所にあれば、エサを体で覆いながら、エサとエサの間は管状に変形してつながります。

粘菌がネットワークを形成する!

この粘菌の性質を利用すると、「迷路を解く」ことだってできます。まずシャーレに「迷路」を作り、次に1つの大きな粘菌をちぎって迷路上に敷き詰めていきます。すると粘菌の断片たちは1つにつながって、迷路全体に広がります。
この状態で入口と出口にエサを置くと、粘菌は両方のエサに集まります。そして最終的には1本の管だけを残して、行き止まりや他の道に広がっていたものはなくなってしまうのです。つまり、この1本の管が入口と出口をつなぎ、「迷路の答え」を示しているんです。しかもこれが最短経路!これも、できるだけ多くの体でエサを吸収したい、つながってもいたいけど最小限の量しか管には回したくないという欲求からなんですね。さらにこれを応用し、数十箇所にエサを置いて粘菌に同様の動きをさせることで、複数地点を結ぶ「最適なネットワーク」を形成することもできるのです。

数学は縁の下の力持ち!

私が専門とする「応用数学」は、数学を実生活に応用していく分野です。例えば、さっきの粘菌がネットワークを形成する能力。これを数学の言語で表し、コンピュータ上でシミュレーションすることで、粘菌の動きを再現できます。つまり、コンピュータ上で、効率のよい鉄道網や道路網を設計できるようになるのです。他には数学を利用して、生物がもつしなやかな動きをロボットで再現する研究も行っています。「数学って何に使うの?」と思う人は多いでしょう。でも、世の中のいろいろな物の裏側で、数学は縁の下の力持ちとして活躍しているのです。数学がないと、飛行機も飛ばないし、ビルも設計できない。コンピュータも動かないんですよ。

小林先生からのメッセージ

理系に進む人には、「物事を面白がる能力」をもち続けてほしいと思います。世の中、いろいろ面白いことがあるので、どんなことにも疑問をもちながら、それについて自分で考える癖をつけましょう。自分で考える能力をつけ、自分で何かを切り開いていく人間になってほしいと思います。

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