教育学

どんな学問?

「教育」の視点から「人間」を考える学問

教育学のイメージ画像!「教育」と聞くと学校を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、それだけではありません。家族や友だちといるとき、知らない土地へ旅行するとき、テレビを見ているとき……学びの環境はあらゆるところにあります。「学校」を中心に考えながら、教育の視点から「人間」について考えていくのが「教育学」です。
教育学では、教育に関わることすべてが研究対象となります。学校をはじめ、図書館や公民館などの社会教育施設から、先生と生徒、もしくは生徒同士の人間関係、そして「人間はどうして学ぶのか」「教育はどうあるべきか」という理論についてまで、その領域には限りがありません。学びの切り口も様々です。「哲学」「心理学」「社会学」「政治学」「文化人類学」などの視点からも教育を考えていく必要があるため、教育学は複数の学問を含んだ総合的な学問だと言えます。
教育学は、教育学系・教員養成系・総合科学系の3種類に分類することができます。それぞれの概要を見ていきましょう。

1.教育学系

「教育とは何か」「教育とはどうあるべきか」など、「教育」そのものを多角的に学んでいくのが教育学系です。例えば「学校教育学」では、学校が抱える様々な問題の原因と解決方法を学んでいきます。具体的には、現在大きな問題となっている「いじめ」の原因と解決方法、いじめの起こらない教育現場を作るにはどうすればよいかなどを考えていきます。

2.教員養成系

学校の先生になることを目的として学んでいきます。教員免許を取得することが卒業の条件となっている大学・学科(コース)が多く、「教育学」や「教育心理学」などの基礎的な科目を学んだうえで、教科別の指導法や学級経営法などを学んでいきます。
教員免許を取得するためには、教育実習を受ける必要があります。教育実習は、自分の母校や大学付属の学校、もしくは協力校などで行います。担当教員の指導のもとで、実際に教壇に立って授業を行い、給食や掃除、部活動、行事に参加することもあり、とても貴重な経験となるでしょう。
大学入学から教員として採用されるまでには、一般的に下の­図のような流れをたどります。

教員採用までの道

3.総合科学系

いわゆるゼロ免課程と呼ばれ、教員免許を取得しなくても卒業できる課程で、学校教育に限らず生涯学習を支えるための知識や技術を身につける分野です。芸術やスポーツ、国際関係、情報、地域社会など多岐にわたる分野について総合的に学びます。近年は、「教育」という視点から環境問題を考えていく「環境教育」分野の研究も注目されています。

こんな研究もあるよ

教育の国際化を目指して

日本に滞在する外国人が増えるにつれ、日本国内の学校で学ぶ外国人子女の数も増えています。小さい頃に日本にやって来た子どもたちは、半年足らずで日本語を覚えます。クラスの友だちと日本語で不自由なく話し、笑い合うこともできるようになります。しかし日常会話を覚えても、授業中に使われる論理的な説明や教科書の文章は理解できていないことがあり、教員が気づかないまま学習が遅れてしまうこともあります。また、物事を考えたり理解したりするうえで背景となる文化の違いはとても大きく、ひそかに疎外感を抱く外国人子女も少なくありません。日本では、増え続ける外国人子女へのサポート体制がまだまだ不十分です。外国人子女教育の研究や制度の整備などが求められています。

Q&Aこんな疑問に答えます

Q.

どのような人が教育学に向いていますか?

A.

教員になりたいという夢をもっている人にとって、教育学は最適な学問です。心構えから教科の教え方まで、教員になったときに現場で活かせる知識や技術を身につけることができるでしょう。しかし、教員にならなくても教育に携わる場面はたくさんあります。「会社で部下を育てるには?」「育児にとって好ましい環境とは?」など、人間に関わっていく限り、「教育」は常に身近にあるのです。そのため、教育学は人間が好きな人に向いているとも言えます。

Q.

教員になるには教育学部を卒業しないとだめですか?

A.

教員免許制度がある大学・学部であれば、指定科目を履修することで、他学部でも特定教科の教員免許を取得できます。例えば、法律・政治学系の学部では社会科、理工学系では理科や数学の教員になれます。他学部で身につけた幅広い知識は、魅力的な授業を展開するのに活きてくることでしょう。一方、教育学部へ進学するメリットとしては、生徒と関われる機会が多いこと、実際に教員になった先輩や専門家から教員採用試験のアドバイスやサポートがもらえることなどが挙げられます。ただし、教育学部でも、大学によって取得できる科目が限定される場合があるので注意が必要です。

Q.

教員採用試験は倍率が高く、とても難しいと聞いたのですが……。

A.

確かに、簡単になれるというものではありません。しかし2001年度試験以降採用数は、地域ごとの差はあるものの、おおむね増加傾向にあります。これは近年、定年退職者が増加したこと、少人数制授業の導入により教員の必要性が高まったことが原因と考えられます。ただしその一方で、定年を迎えた教員の再任用や非常勤講師の採用など、教員の新規採用を抑えようとする傾向もあります。今後も採用数の動向には変化があると考えられるでしょう。

教員採用試験

卒業後の主な進路

教員を目指す学生が多数

子供の視点でものをみせる教員養成系では、教員を目指す人がほとんどです。ただし、教員採用試験の倍率は、都道府県や教員の種類によって異なります(参照)。募集人数は決して多くはありませんが、大都市を中心として教員を増やす動きも見られます。学童保育指導員や特殊学校の介助員、産休・病休の代替教員などで経験を積みながら採用試験に備える人も多いようです。他には教育学系・総合科学系の人と同様、一般企業や官公庁へ就職する人、大学院へ進学する人がいます。

専門用語を知ってるかな?

PISA調査

OECD(経済協力開発機構)が各国の15歳児を対象に行う学力の国際比較調査のこと。2000年から3年ごとのサイクルで行われ、義務教育で身につけた知識を活用する力を調べます。日本では2003年の調査で学力が著しく低下、「PISAショック」と呼ばれました。その後、教育方針を転換した成果もあり、2009年、2012年は連続して学力が向上。2015年の調査では、72ヵ国中の順位が科学的リテラシーは2位、数学的リテラシーは5位、読解力は8位という結果でした。

アクティブ・ラーニング

2012年に文部科学省によって定義された言葉。受動的ではなく能動的な姿勢で学ぶことによって、能力・知識・教養・経験の育成を図る学習方法。最近では、大学だけでなく小・中・高等学校でも、生徒が「能動的に」学び、生徒同士で「学び合う」ことが重視されています。しかし、その具体的な方法はまだ手探りの状態です。アクティブ・ラーニングを実現するためにどんな授業ができるのか、研究と実践が重ねられています。

キャリア教育

早期離職者やフリーター、ニートの増加を受け、しっかりとした就業観を早くからもたせるための試み。具体的には、実際に働く現場を経験する職業体験や、働いている人の話を聴く講演会などが小・中・高等学校で行われています。

教育格差

育つ環境によって子どもの学力に格差が生まれること。例えば親の所得格差が要因で、進学塾に通える子どもと通えない子ども、大学に通える子どもと通えない子どもなどの間で、学ぶ機会や量に差が出てしまうことが挙げられます。また、学ぶ地域によって学力に格差が出ることも指摘されています。

教科化

小学校では2018年度、中学校では2019年度より、道徳が「教科」となります。これにより道徳の検定教科書ができ、「評価」も行われるようになります。いじめが大きな問題になっている現代において、道徳教育が充実することに期待の声がある一方、一方的な考えを押し付けることになるのではないかという懸念の声もあります。また、数値で評価できない道徳をどう評価するかについても検討が重ねられています。また、小学校では2020年度より、5,6年生の英語の教科化も決定しました。

教職大学院

より高度な指導力や授業展開力をもった教員の養成を目的とした専門職大学院。理論だけでなく、実践も重視したカリキュラムが特徴です。大学を卒業してこれから教員になろうとする人はもちろん、すでに教員として働いている人でも通えます。

中1プロブレム

中1ギャップとも言われ、不登校、いじめ、学習意欲の低下などの精神的・学力的問題が、中1〜中2の生徒に特に顕著に見られること。はっきりした原因はわかっていませんが、中学校に進学して環境が変化したことによる不安や、小学校と中学校との授業形態の差についていけないこと、それらいくつかの理由が合わさって起こる現象だと考えられます。

Interview

「よりよい学び」を追求する新領域

東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 環境・社会理工学院 社会・人間科学コース 松田 稔樹 先生

東京工業大学
リベラルアーツ研究教育院 環境・社会理工学院
社会・人間科学コース

松田 稔樹先生

東工大で教育の研究?

私は今、学部で教職科目を担当し、大学院で教育工学の研究指導をしています。私も数学の先生を目指して教職科目をとっていましたが、3年生のときに「卒業研究で教育の研究はできないか」と教職の先生に相談し、今に至るというわけです。「教育」と「工学」ってどう考えても結びつかない感じですが、それは「工学=モノを生産するための学問」という先入観があるから。でも、工学の本質は「問題解決」です。うまく解決するには設計や計画が大事で、何かを実現するために「もっとよい方法はないか」を考え、それを定式化していくことで設計や計画を支援する学問になるわけです。

「教授活動ゲーム」で生徒と先生を育てる

私が今、主に研究しているのが「教授活動ゲーム」です。みなさんは、勉強は机に向かってやるもの、人から教わるものと思っていませんか?でも、遊ぶとき、テレビを見るとき、友だちと話すとき、どこにでも学ぶ機会はあります。そんな日常の中にある学びを対話という形でゲーム化し、学びの過程をデータ収集して、それをもとに「どんな対話がよりよい学びを導くか」を研究しています。そこから「思考力」や「課題解決力」を高めるにはどんな働きかけをしたらよいのかを定式化して、先生の養成に活かすわけです。授業シミュレーションで、先生が「こういうふうに教える」と選択すると、「面白い」「わかんない」など個々の生徒の反応が返ってくるんです。そうやって先生自身が授業力をチェックしたり鍛えたりできるシミュレーションシステムを研究しています。

人を育てるのは、あくまでも人

私の関心は、教育の本質とは何かです。人を育てるのはあくまでも人です。だから、この程度のことならシステム化できますよという範囲を示して、「人にしかできない教育とは何か」「先生は何をどう教えるべきなのか」を追求したい。私が思う「人にしかできない教育」の1つは、勉強がいかに面白いか、いかに役に立つかを教えるということですね。勉強によって自分が向上したという実感をもてない限り、勉強したって楽しくない。勉強は大学に入るためのものでも、就職するためのものでもない。自分は社会の役に立つ、という存在価値を証明するためのものだと思うんです。だから、「この勉強は何に役立つのか?」を人に問うだけではなく、「学んだことをどう活かすか」を常に意識してほしい。また、学びの場は日常生活の中のどこにでもありますから、何かをするときに常に問題解決ということを意識して、もっといい方法はないかを考えてほしい。そうすると、学校で学んだこと、生活の中で学んだことが結びついて、それが何に役立つのかは自ずと見えてきます。そういう経験は教師になろうとする人にとっては特に大事です。

松田先生からのメッセージ

今の若い人は、「みんなと同じ」という側に比重を置きすぎている気がします。でも、社会で役立つには「人と違う強み」をもち、「これができるのは君しかいない」と思われることが大事です。自分の「個性」を発見し、それを活かす努力や訓練は、将来、教師になって子ども達の力を発見し、伸ばすためにも大事ですね。

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